「市民参加型教員養成プログラム」は教員免許法上の必修科目の一つ「総合演習」に
おいて、児童・生徒の保護者の視点から若手教員に期待する資質・能力をご提示
いただき、PTAによる地域活動や子育て支援などへの学生参加の機会を提供することが
プロジェクトの主旨。
学外コーディネーターは学内コーディネーターと協力して総合演習を支援する。
(大学報告資料の抜粋)
「市民参画型の総合演習の試み」
本学では、単元・教材を開発したり、 学習展開に必要な人的・物的な学習環境を
整えたりできる教師としての能力が必要であると考え、H 17年度に、
教育委員会、保護者、企業、NPOなど多様な市民から構成される
「市民参画型教員養成コーディネーター会議」を設けた。
例えば、中部電力と連携して教材研究を深め、学生の実践的な指導力の向上を
図っている。これは、大学教員と各コーディネーターがそれぞれの立場から共に
教員養成に関わることにより、人として魅力を持ち活力にあふれた教員を育成
するという実践的試みとして高く評価できる。
【講義内容】 (2007年1月)
「将来教師になる人達へ、PTAとは何ぞや?」
PTAに対するイメージ…無味無臭
入学式でも特に説明はない、自動的に入会している(集金されている)、
学校関係の資料は妻が読んで処分、
PTAの会議や活動はほとんど平日、会長が式のあいさつに出てくる
(娘の入学式、顔も覚えていない)知らなくても不便はない、誰かがやってくれている
疑問からのスタート…PTA役員の勧誘(前会長)11月
「うちは楽ですから…。大きな式であいさつしていただくのと、年7回の会議に
出るだけでいいです。会議もお仕事があれば欠席でも構いません。」
楽しさもやりがいのかけらも感じない、名前を貸せばいいのか?
自分の抱いていたPTA会長のイメージ…偉い人(自分でいいのか?)
軽い気持ちで承諾→妻「え~!やるの~?」
何故?「大変そうじゃない!」何が?「よくわからないけど…」
やりたいか、やりたくないか?→よく分からないし、人に聞いても知らない。
やらずにすむならすませたい。でも頼まれた以上、
子どもがお世話になっている学校に少しでも恩返しするために
自分なりにできることをやろう。
1年目・副会長職…勉強
分かったこと…ほとんどが申し送り業務(昨年と同じことの繰り返し)
最大の争点は次年度の役員・委員の勧誘をどうするか?
組織を維持するための努力?(子どもたちや保護者のために何ができるかじゃないのか?)
誤解だらけのPTA…イメージの払拭
「やりたくない人たちにやってもらうためにはどうしたらいいか?」ネガティブなスタートライン
暗黙のルール…6年間のうち1回は何かしらの委員・役員をやってもらう
「逃げ得は許さない」(なんじゃそりゃ?)
やりたくない人にはやってもらう必要はない→ボランティアの精神
やりたくなる、もしくはやっても良いかなと思われるためにはどうしたらいいか?
「過去のイメージの払拭」
自分たちのやる前とやった後の心境の変化「後悔?」「やってよかった」
もう一度何のための、誰のためのPTAか、実際どういう人たちがどういう気持ちで
何をやっているのか、しっかり宣伝する。
その上でアンケートをとる→本当にやりたくないのか?
→「やる人がいないならやってもいい」多数意見
マイナスに協調しない
一部の命がけで断る人「できない理由(いいわけ)」
・仕事をしていてできない
・親の面倒を見ているからできない
・どうして私のところに来るの?あの人のところに先に行って!
・全員がやって私が最後の独りになったらやる
こういう話がクローズアップされる→ほとんどの人が中身をよく知らないから、
PTAをやると損をするイメージが感染する→ネガティブなPTA環境
PTAは人間関係が大事→保護者同士(特に母親同士)は地域的付き合いもある。
みんなの意見に協調しないと仲間はずれにされる不安?マイナスにも協調しやすい。
2種類のマイナス:
①根拠のある反対、疑問、意見(みんなの利益を考えての主張)
→しっかり耳を傾けて対処
②根拠のない反対、疑問、意見(自己の利益・不利益を主張)
→耳を傾けて無視
②の場合、PTAに関してのみではなく、子ども会や地域活動においても
同じような言動をする。
このような意見に振り回されないよう自分たちの言動に信念を持つ
(良いことをしているというプライド)
PTA活動は基本的にボランティア…義務・ノルマではない
(自分にできる範囲で社会に奉仕する)
やりたい人で集まるのが理想、どうせやるならやりがいのある仕事をしよう
最悪でも「子どもがお世話になっている学校に少しでも恩返しするために
自分なりにできることをやろう」の精神
大半はこの精神は持っている→ポジティブなPTA環境
できない理由を考えるより、自分に何ができるか考えよう!
学校に求められる態度…感謝、共育
ネガティブな環境→学校側の責任「やってもらって当然×」感謝の念が少ないと
こういう空気になりやすい
→学校側の態度「やっていただいて感謝」仕事が評価されれば誰でもうれしい
「もっと学校のこと、先生のことを知ってもらおう」
学校と保護者で一緒に子どもたちを育てていこう
受けるべき批判は受け、お願いするべきことはお願いする、そして感謝する(校長次第)
やりがいのあるPTA活動…前向きな空気作り
PTAとはなにか?
P(Parents:親)T(Teachers:教師)A(Associasion:組織)の略で、
「保護者と教職員の会」という意味
歴史的背景→皆さんが研究されたとおり
PTAの意味や位置づけは時代や地域によって様々に変わっている
近年子供を取り巻く環境はめまぐるしく変化し、今までに想像もつかなかったような
問題も山積み(モンスターペアレンツ)
保護者と教職員が協力して、次代を担う子供たちの健全育成のための、
より良い教育環境・生活環境を作ることを目標とし、
家庭・学校に加えて地域社会が連携して行う様々な活動が、
相互理解や問題解決につながる。
昨今の社会事情の中で働く母親も増え、時間的に厳しいなかでどう工夫していくか?
親としての責任感、社会人としての責任感
その学校のPTA環境が+か-かで子どもたちの教育環境・生活環境は変わってくる
→学校・教職員だけでは限界がある
やった人が達成感を感じる→周りに良い宣伝をする→やる人が増える
「大変だった」OR「大変だったけど楽しかった、色々勉強になった」
優秀な保護者は多い→様々な社会経験を活かして、能力を十分に発揮できる
【新しい取り組み】
①保護者の意識改革
テーマ:みんなでみんなの子どもを育てよう
→共育ボランティア制度:
実習や事業のサポートや、施設の保全のお手伝い、ゲストティーチャー
PTA活動→1年単位…積極的に参加したい人の取り込み
愛知万博引率ボランティア、街探検引率、調理実習支援、カーテン修繕
②PTAが積極的だと地域も変わってくる
テーマ:子どもたちの登下校の安心・安全をどう守るか?
→あんしんみまもり隊の発足:
保護者…共働きで家にいない、主力…地域の元気な現役引退者
5地区の区長が結束。おらが街の子どもたちをみんなで守ろう!
できるときにできる範囲で派手なユニフォームを着て見守る「見せる防犯」
第1期募集:保護者30名、地区70名:計100名
第2期募集:保護者30名、地区50名:計80名…現在:180名(すべて任意)
子どもたちからのお礼…明るいあいさつ
たくさんのマスコミ取材、警察署からの感謝状
みまもり隊通信、総会、感謝の会、あんしんネット(同報メール)
③地域の変化
テーマ:学校を中心に地域が結束しよう
→運動会の共催:
午前は学校主催、午後はPTA・地区の共催で開催
種目の選定から、選手の応募、当日の運営まですべて地区の人と一緒に行う
7月から各地区区長~担当者4~6回の会議
地域の人、子ども、保護者、教職員が顔見知りになっていく→お互いに安心感がある
④父親のPTA参加
テーマ:PTAに一番縁遠い父親をいかに学校に呼ぶか?
→おやじの会発足:
父親同士の親睦、子どもたちにおやじの偉大さを教えよう
自分の子どもだけじゃなくて、街のうるさいがんこ親父を目指す
≪イベント≫流しそうめん大会…竹の採取からすべて手作り
池の掃除、自転車工房
カレーライス…手作りのかまどで飯盒炊爨とカレーの炊き出し
テント村…校庭でキャンプ
卒業記念餅つき大会 、などなど
≪その他≫おやじたちの有志で青パトによる夜のパトロールを行う。
日頃子どもたちを見守ってくれている地域の方へのお礼に、
時間の空いた夜などに巡回を行う。
他校のおやじの会ともスポーツを通じて交流を図る。
⑤更なる防犯意識の高まり
テーマ:学区全体で学区全体を見守ろう
→青色回転灯パトロールカーによる巡回:
あんしんみまもり隊として安城警察署に申請
市が持っているパトカーを利用したみまもり活動
PTAと5地区が分担をして活動を担当地区の
防犯活動にも役立つ、車なら広範囲で活動できる
(それまでは各地区ごとに徒歩や自転車で防犯パトロールを行っていた)
結論 : PTAは子どもたちのために今何ができるかを考え実行する組織
感想「学校のことがよくわかった」「先生と仲良くなれた」「保護者の友達が増えた」
「自分なりに役に立てた」
保護者だけでなく地域との協調もはかれ、子どもたちにより良い
教育環境・生活環境を与えられる
もし有事の際に人はどこに集まるか→学校
学校を中心にコミュニケーションが取れている地域→安心感
学校・保護者・地域の信頼関係が大事
余談 : 単Pより上部組織の役員・委員は持ち回りの宛て職。
多くが1年任期のため専門的な人間がおらず、申し送り的な業務が多い。
また連絡協議会のため具体的な業務はなく、その割りには組織存続のための
会議が多い。
総会、研究会、講演会などへの動員要請もありこれらを負担に感じることもある。
しかし、有事の際を考えると保護者としてまとまる組織の存在は必要であり、
また行政などへの圧力団体としても必要。