教科書公開討論会

名古屋市の超党派の市議会議員がつくる「歴史教科書を考える名古屋市会議員の会」が主催する、『中学校歴史・公民教科書の公開討論会』が名古屋市役所で開催され、共催者からお招きをいただき出席しました。会の代表を務められる藤澤ただまさ市議は、私よりも若いのですが、期を十分に重ねられた先輩議員です。来賓として河村たかし名古屋市長も出席され、会場は定員オーバーの盛況振りでした。

今回の会は、来年度から使用される歴史・公民教科書の採択が今年度実施されるのに当たり、対象となる7社の著者もしくは編集者を一堂に集めて、自社の教科書の特長をプレゼンテーションしていただき、後半はテーマに沿ってどのように教科書がまとめられているかを討論するためのものでした。これは日本で初めての取り組みで大変画期的なことです。特定の教科書を進言するためのものでもなく、逆に互いの教科書を批判しあうための場でもなく、純粋に公平に討論する場として設定するものでした。

しかし残念ながら、7社中参加してきたのは2社だけで、残りの5社は辞退という回答でした。

出席:自由社、育鵬社

欠席:日本文教出版、東京書籍、帝国書院、清水書院、教育出版

ただし、教育出版に関しては開催の趣旨に沿った形で、文書により丁寧な回答がされていたことを付け加えておきます。

帝国書院にいたっては辞退の書面に、「教科書採択の公平性の確保のためには、静謐な採択環境の維持が重要と考え、参加しない判断をした」との文言がありました。河村市長も言っていましたが、公開の場で公平な討論を行うことが静謐な採択環境を乱すと考える発想が理解できません^^。いずれにせよ、各社とも「詳しくは自社のホームページをご覧下さい」となっていました。

さて、討論会の内容ですが、まずは出席した2社から自社の教科書の特長に対してプレゼンテーションがありました。

その中で、若干エスカレート気味の編集者から、教科書採択の仕組みに対する不満がこぼれてきました。『「地域の代表である教育委員が、子どもたちにふさわしい教科書を自ら手にとって選ぶ」ということが、法で決められているにもかかわらず、多くの教育委員がそれを教育委員の執権として認識していない。教育委員会の議事録を読んでも「採択協議会がより望ましいとした教科書を採択する提案がなされた」となっている。参考にするのは良いと思うが、追認するのはいかがなものか?』というものでしたが、これが今の教科書採択の一番の問題点ですね。執権は各市町村の教育委員会にあるが、素人の教育委員さんがすべての教科書を読破してよりふさわしいものを選ぶことは現実的に不可能ということで、広域で作る採択協議会で検討される。ここもPTAや教育委員、校長先生や担当の教師などで構成されていますが、実質的にはその下部組織の作業部会が検討した結果を承認するだけでという話しを聞きました。結局責任が分散されているというか、誰が選んだかよくわかりません。そんな中で毎回同じ出版社の教科書が採択されていることに、何かしらの疑問を感じる人がいてもおかしくないですね。その疑問に対して教育委員会も明確な回答がなかなかできない実態も不憫だと思います。

私も特定の教科書を強く勧める立場にありませんが、自分の子どもたちが使う教科書には「“誰か”の歴史を学ぶのではなく、“自分たち”の歴史を学ぶ」という視点に立って選んで欲しいと思います。最初に書いたようにこれは「日本初の公開討論会」で、開催したことに大変意義があると思います。市民は教科書採択に仕組みも、教科書によって内容がこんなに違うこともよく理解されていません。これからこのような討論会が全国で開催されることによって、議論されることはとても有意義なことだと思います。